星空の解放日
麦星すばる
出し物-天文部-
|辰巳《たつみ》なおきです。
今、僕達のクラスでは|星天祭《せいてんさい》の出し物を決めるための話し合いをしているのですが、全く話し合いになりません!
|天文部《てんもんぶ》1年の|星天祭《せいてんさい》実行委員は僕と隣のクラスの|小清水《こしみず》さんになったとお伝えしたのですが・・・。
「なおきいいなー」「なおき代われー」「|小清水《こしみず》の写真くれー」とあちこちから聞こえてきます。
ところで|小清水《こしみず》さんって誰なんでしょうね?
「誰も実行委員、立候補しなかったじゃないですか!・・・というわけで僕たちのクラスの出し物を決めたいと思います。こういうのがいいなというアイディアがあれば挙手で」
「はい。|天文部《てんもんぶ》は堅苦しいイメージがあるからそのイメージを緩くできないかな?」
「どうするよ?」
「イケメンカフェは無理でも執事喫茶とかで|文学部《ぶんがくぶ》の女子とお近づきになりたい!」
「あ、それいいかも!緩くできそうだし女子来るぞ!」
「それにうちのクラスには|瀬名《せな》がいる。集客力アップ間違いなし」
「これだから男子は!!!」
実行委員は誰も立候補しないし、意見は言いたい放題、おまけに困ったときの|湊《みなと》くん。
この状況、なんといえばいいんでしょうか。
普段のこのクラスは勉強中はとても静かでまじめで
勉強に夢中という感じなのですが、|星天祭《せいてんさい》ではしゃいでいるのでしょうか。
僕はため息をついてしまいました。
そういえば、|湊《みなと》くん、話し合いに全く参加していませんね。
「えーと。何か言った?」
「おいおい、|瀬名《せな》。聞いてなかったのかよ。出し物は執事喫茶にするって話」
やっと、|湊《みなと》くんが気付いたようです。
|湊《みなと》くんは少し考えてみんなに提案をします。
「うーん。|天文部《てんもんぶ》なんだから天体観測ツアーとかにすれば?
執事喫茶だと男子しかできないんじゃない?」
「流石|湊《みなと》くん!!じゃあ女子はそうしましょ!」
「女子はってどういう・・・」
「ごめん、私も|湊《みなと》くんの執事姿拝みたい!」
クラスの女の子達が目を輝かせます。
まあ|湊《みなと》くんの執事姿だったらお客さんも入りそうですし、盛り上がって一石二鳥ですよね!
みんな考えていることは同じようで、拍手に、盛り上がる声が響き渡ります。
「|湊《みなと》くんの執事姿!」「執事喫茶で女子呼ぶぞー!」と、とてもにぎやかになってきました。
反対意見もないですし、これで決定のようなものですね。
「じゃあ執事喫茶と天体観測ツアーに決定!!」
|湊《みなと》くんのおかげで出し物も決まってホッとしているんですけれど
背後からすごく冷たい気配がするんですよね。
「なおき、くん・・・?」
やっぱり、|湊《みなと》くんが笑顔で立っています。怒りますよね・・。
でも僕も実行委員として、|星天祭《せいてんさい》を盛り上げなくてはいけません。
「今回は友人としてではなく実行委員として集客力を優先します!ごめんなさい!」
僕が|湊《みなと》くんに謝ると|湊《みなと》くんは「嘘だと思いたい、夢だと思いたい」とただそれだけを繰り返していました。
そんな声は周りには聞こえず、みんなは出し物が正式に決まって、「やったー!」という掛け声や拍手が鳴り響きます。
「|湊《みなと》くん、本当にごめんなさい」と思っていたのですが、|湊《みなと》くんが僕の肩にそっと手を当てて・・。
「じゃあなおきくんもみちづれだね。口調だけは執事だし。しっかりやってもらおうか」
「勘弁して下さいよぉ」
はあ、この笑顔が怒っているときの笑顔じゃなければどんなにいいやら。
今度は笑い声まで聞こえてくるじゃないですか。そして、演劇のことも伝えなくてはいけないですね。
演劇部の演劇で、|鈴原《すずはら》先輩と演劇部の推薦により、ほのかさんと|湊《みなと》くんが主役を演じることになった、と。
早速伝えると、もう大騒ぎ。そりゃあ|湊《みなと》くんが主役なら見に行きたくなるでしょうし・・・。
あと、ほのかさんは|天文部《てんもんぶ》にあまり顔を出しませんから、ほのかさんが気になる方もいるようでした。
|湊《みなと》くんは演劇の主役であることを不思議に思ったのか最初「え?」って顔をしていましたが、何かを察したようで次第に落ち着いていきました。
お昼休み。
僕は外の空気を吸いたくなったので、屋上にいます。
そこにはクリーム色の髪、お団子結びで前髪が三つ編み。
瞳は淡い水色で、小柄で・・・あれ?
この間、|湊《みなと》くんから聞いた|小清水《こしみず》さんって・・・この子でしょうか?
「はあ、じゃんけんに負けて実行委員になっちゃうし、|星天祭《せいてんさい》で先輩が暴れるって言うし楽しみじゃないよ・・・」
|小清水《こしみず》さんがなにか言っているようでしたが、遠くてよく聞こえません。
近づいて声をかけてみましょう。同じ実行委員ですし、会話はできたほうがいいですね。
「えーっと。あなたが|小清水《こしみず》さんですか?僕は隣のクラスの|辰巳《たつみ》なおきです。
実行委員になりましたのでよろしくお願いします」
「こ、|小清水杏奈《こしみずあんな》です・・。こちらこそよろしくお願いします。
あの、なおきくんって呼んでもいい、ですか?」
「大丈夫ですよ、僕も|杏奈《あんな》さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「は、はい」
よかった。|小清水《こしみず》さんで合ってました。
僕が|湊《みなと》くんの友人であることは伏せておきましょう。
「なおきくんはどうして実行委員に・・?」
「いやー、立候補者が出なかったので。|杏奈《あんな》さんは?」
「じゃんけんに負けちゃって。人前に出るのが苦手なのについてないな」
「そうでしたか。僕もできる限りサポートしますので
|星天祭《せいてんさい》、楽しい思い出にしていきましょう。楽しまないともったいないですから」
「そう、ですね。私も頑張ります」
|杏奈《あんな》さんは不思議そうに僕を見つめます。
な、なにかしてしまったのでしょうか。
「なおきくんは・・どうして私に話しかけてくれたの?
他の男の子は私の外側だけ見て近づいてきたのに。なおきくんは違います・・よね?」
そうですよね。|杏奈《あんな》さんは|湊《みなと》くんから聞く感じ、
可愛らしいから色んな人に声をかけられるそうで、この間も告白されたとか。
それじゃあ警戒されても無理はないですね。
「同じ、実行委員として話をしてみたかったのと、僕は外側より内側を重視する方だから、ですかね。
外側・・容姿、身だしなみも大事ですがその奥にある心の在り方を知りたいのです」
「心の在り方・・?」
「|杏奈《あんな》さんは内気そうですけど、芯は強いし真面目な方。
だからずっと|湊《みなと》くんを見守り続けられたのでしょう。
そういう真っ直ぐなところ、僕は素敵だと思いますけどね」
「そう、かな。|湊《みなと》くんには好きな人がいたし私は何も出来なかったよ」
僕も話題選びを間違えてしまいましたね。
|杏奈《あんな》さんはずっと|湊《みなと》くんのことが好き。
けれど、|湊《みなと》くんはほのかさんが好き。
|杏奈《あんな》さんはまだ、ほのかさんのことは知らないでしょうから
ほのかさんのことも言わないでおきましょう。
「ちゃんと思い続け|湊《みなと》くんに告白できたじゃないですか。
それは勇気がないとできません。続けるって才能なんですよ。
人の好き嫌いも気まぐれに変わりますし」
「な、なんで告白したって知ってるの!?」
「えーっと、|湊《みなと》くんと同じクラスだと|湊《みなと》くんの情報が沢山入ってくるので・・。すみません」
「そ、そっかあ。|湊《みなと》くんは有名人だもんね!」
|杏奈《あんな》さんは|湊《みなと》くんに告白したあとも、|湊《みなと》くんがお好きなんですね。
|杏奈《あんな》さん、|湊《みなと》くんの話をしても笑っていられる。
「|杏奈《あんな》さん、|湊《みなと》くんのどこが好きになったんですか?」
「え、えっと・・・」
それから|杏奈《あんな》さんによる|湊《みなと》くんのお話は続き、あっという間に時間に。
話している時の|杏奈《あんな》さんはとても幸せそうでした。
でも、好きな人に好きな人がいても、好きでいるってどんな感覚なのでしょう。
「なおきくん、今日はありがとうございました。また放課後・・」
「はい!こちらこそありがとうございました。これからよろしくお願いします!」
|杏奈《あんな》さんも|湊《みなと》くんも似たようなことで悩んでいました。
二人共、外見だけを見られて、近寄られて、疲れていました。
外見がいいことは決して悪いことではありませんが
外見のイメージと違うことをすることで実際は違ったと思われることは怖いです。
僕も|杏奈《あんな》さんの力になれたらいいのですが。
さて、午後の授業が始まってしまいますね。
行きましょう。