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星空の解放日 麦星すばる

ストーカー

なんとか、教室に入ることができた私。 そんな私を|流星《りゅうせい》くんが出迎える。 「ほのぴ、おはー!今日、すごい騒ぎだったね!それで遅くなったの?」 「うん。まあ、そんなところかな!」 |流星《りゅうせい》くんは相変わらず元気だ。 でも|流星《りゅうせい》くんの明るさにちょっとついていけないかも。 昨日の出来事が怖かったからやっぱり元気が出ない。 「で、あの騒ぎの原因はなんなのさ?」 「えっと、留学していた先輩が帰ってきたみたい」 「ふーん。俺よりモテるなんて百万年早いぜー! ・・・でも、俺は|月華《つきか》先輩一筋だから!!誰がモテようと関係ない!」 |流星《りゅうせい》くんの大きな声に反応して、 周りから「おい、|流星《りゅうせい》!好きなやつでもできたのかよ」 「|月華《つきか》先輩って誰?紹介して!」とざわめきはじめる。 |流星《りゅうせい》くんはすっかり囲まれ、 私が、ぼーっとしていると|大河《たいが》が私の手を引く。 そのまま一緒に廊下へ出ると|大河《たいが》は周りを気にしながら私に声をかける。 「何かあったのか?」 「う、ううん!なんにもないよ!」 「・・・なんにも?ほのかのそういう時の顔は何かあったときだ」 |大河《たいが》は私の目をじっと見ている。こういう時の|大河《たいが》は鋭い。 夏休み明けからいつも通りに過ごせていると思っていたけど、そんなこと、なかったみたい。 「ほ、本当に大丈夫だよ!|大河《たいが》だって昨日ボーっとしてたよ?」 「ああ、寝不足だったからな」 だ、だめだ。|大河《たいが》の顔色が何一つ変わらない。 「・・・やっぱり、何かあったんだな?」 |大河《たいが》に問い詰められ、私は何があったのか|大河《たいが》に話してしまう。 昨日、誰かにつけられていたこと。|湊《みなと》くんに相談したこと。 さっき校舎に入るとき、|湊《みなと》くんとなおきくんに助けてもらったこと。 職員室に寄って|十蟹《とがに》先生に報告してから教室に入ったこと。 「怖かったよな。力になれなくて本当にごめん」 「|大河《たいが》は悪くないよ、大丈夫」 「・・・まあ、|湊《みなと》がいれば、大丈夫だよな」 |大河《たいが》が私を心配してくれているのは分かったけれど どこか落ち込んでいるようにもみえた。 学校が始まってから、|大河《たいが》の様子もやっぱりおかしい。 「|大河《たいが》も学校始まってから元気ないよ。私で良かったら聞かせて」 「いや、俺は本当に寝不足なだけだから。 ほのか、辛い中話してくれてありがとう。それじゃ教室で」 |大河《たいが》は一足先に教室に戻っていってしまった。 私はただ、|大河《たいが》の名前をつぶやくだけで、何もできなかった。 そして、ゆっくりと教室に入った。 そんな私を見て声をかけるのは、やっぱりくるみちゃんだった。 「いなほちゃん、元気がありませんわ。何かありましたの?」 くるみちゃんも|大河《たいが》と同じことを聞いてくる。 ただ、くるみちゃんのときは身構えてしまう。 「なんでもないよ!ちょっと|大河《たいが》に悩み事、相談してもらってたんだ」 「ならいいですけど・・・。|大河《たいが》くんも元気がありませんし・・・心配ですわ」 「本当に大丈夫だって!」 心配そうに見つめるくるみちゃんに対して、必死に笑顔を作って明るく振る舞う。 |流星《りゅうせい》くんの周りは|流星《りゅうせい》くんの恋?を応援する声と |月華《つきか》先輩を紹介してほしい声と色んな声が混ざっていてもう何がなんだか分からなかった。 チャイムが鳴って|十蟹《とがに》先生が入ってくる。 全員が座席に戻り静かになる。 そしていつものように授業が始まる・・はずだった。 |十蟹《とがに》先生が「おはようございます」 と挨拶をすると明るい表情から落ち着いた表情に変わる。 「最近、ストーカーが現れているようです。 登下校の際は学校の生徒、ご家族、親族の方との登下校をお願いします。 一人で動かないように、ピース。これは理事長命令です」 |十蟹《とがに》先生からアナウンスが入る。 きっと、私のストーカーが捕まってないからだ。 クラスの子達も「ストーカー?」「また教員だったら嫌だよな」 「一人で帰れないの?」とざわざわしている。 ざわつきが止まらなくなり、|十蟹《とがに》先生は「みなさんお静かに」と手をパン!と叩く。 そして、学校や警察の連絡先が書かれた名刺のようなものをみんなに配る。 「困ったときの緊急連絡先になります。学校で困ったことがあったら私でも 相談室にいるスクールカウンセラーの方でも構いません。相談してください。 教員と新聞部が提携して情報を集めています。 先生に話しづらければ新聞部の誰かにこっそり伝えてね。 一人で抱え込まないように、ピース」 |十蟹《とがに》先生の言葉に対して「はーい」とみんなで返事をする。 |十蟹《とがに》先生も優しい顔つきに戻り、なんだか安心した。 「まあ、ストーカーですって。怖いですわ。 私は|霜村《しもむら》さんと一緒なら大丈夫かしら?・・いなほちゃん?」 「う、うん!くるみちゃんはそれで大丈夫じゃないかな?」 「帰り、お送りしましょうか?いなほちゃんでしたら問題ありませんわ」 「えっと、大丈夫!ありがとう、くるみちゃん」 やっぱり私、顔に出てたかな。 くるみちゃんに送ってもらえるのは助かるけど、何かあったら迷惑になっちゃう。 それから、いつも通り授業が始まって、お昼休み。 お昼休みはくるみちゃんと|大河《たいが》と|流星《りゅうせい》くんでいつもの場所に集まる。 「人混み作ってた留学生、|矢追冬真《やおいとうま》っていうらしい。 ザ・優等生って感じの見た目だよなあ。 俺達と同じ|文学部《ぶんがくぶ》でしかも美術部に入っててコンクールで賞取って、 それをきっかけに美術の勉強で留学して、今日帰ってきた、と」 |流星《りゅうせい》くんが|冬真《とうま》先輩の情報をペラペラと話し出す。 優等生?イケメン?|十蟹《とがに》先生の言うとおり、人混みができちゃうのも納得だな。 でも、私が通ったとき、顔は見えなかった。どんな人なんだろう? やっぱり|湊《みなと》くんみたいな人なのかな。 「私達が入学する前に留学された方ですから、別に私達には関係ないのでは?」 「だって、ムカつくじゃん!突然現れて、モテますよ!みたいなアピール!」 「さっきは、|月華《つきか》先輩一筋だから誰がモテようと関係ない!って言ってたのにな」 「それとこれとは話が別!|瀬名《せな》といいあの先輩といい、モテるのはムカつく!」 |流星《りゅうせい》くんが子どものような態度を取る。 |大河《たいが》はそれを見て「小学生じゃあるまいし」と笑っている。 「そういう態度を取るからモテないのですわ、|秋月《あきづき》くん」 「くるみさんが言うことでもあんまりです」 くるみちゃんの冷めた一言で|流星《りゅうせい》くんも我に返り落ち着きを取り戻した。 私達が他愛のない話をしていると、めりの先輩が来た。 「お疲れ!新聞部のパトロールよ。みんな、なんともない?何かあったら相談してよね」 「めりの先輩!ありがとうございます!今は大丈夫です」 頼もしいめりの先輩の姿を見ると安心する。 めりの先輩はパトロールがあるからと急いでどこかに行ってしまった。 今日は特に情報もなく、昼休みは終わった。 あっという間に放課後。 |十蟹《とがに》先生からは一人で帰らないようにと言われている。 どうしようかな。 |湊《みなと》くんから「一緒に帰ろうか?」って言われてたけど待ち合わせもしていない。 下駄箱に手を伸ばすと手紙が落ちてきた。 最初、|湊《みなと》くんからかな?と思ったけど筆跡が違う。 シーリングスタンプじゃなくて、シール。 差出人の名前はない。 「中庭でお話したいことがあります 一人で来てください」 私が危険なときって、だいたい、一人のとき。怪しい。 中庭に向かわず、図書室に向かうと、ちょうど|湊《みなと》くんとめりの先輩がいた。 「あ、|稲荷《いなり》さん。ちょうど|鈴原《すずはら》さんと話していたんだ」 「|稲荷《いなり》ちゃんと|瀬名《せな》くんを一緒に・・で、|瀬名《せな》くんが部活を休めるように・・かあ」 めりの先輩も頭を抱えていたようだった。 「あの、めりの先輩。こんな手紙があったんですけど・・・」 私は届いた手紙をめりの先輩に見せる。 「!?・・・なるほど。今回は私と|瀬名《せな》くんで後ろから見張りましょうか。 ただの可愛い告白ならいいけど|稲荷《いなり》ちゃんが誰かにつけられてるならその犯人の可能性もある。 カメラとか録音機材も揃ってるし証拠は残したいの。 ただ、そうすると|稲荷《いなり》ちゃんは手紙の差出人と接することになる。大丈夫?」 「だ、大丈夫です!|湊《みなと》くんとめりの先輩がいてくれるなら」 「・・・|稲荷《いなり》さん、君のことは絶対守る」 |湊《みなと》くんが私の手を優しく握る。なんだかホッとした。 めりの先輩は「まーた!二人だけの世界!」と呆れていた。 私たちは中庭に向かう。 |湊《みなと》くんとめりの先輩は影で隠れて録音や録画の準備をしている。 私は、時間稼ぎのため手紙を持ちながら ゆっくりと中庭をあちこちとうろつく。 「えっと、中庭で合ってるよね?」 私がつぶやくと、木の後ろから静かに誰かが現れる。 私が振り返ってみると、そこには 黒色のショートヘア、青空のような瞳。 整った顔つき、|大河《たいが》よりも背は高くて一目でかっこいいと分かる|文学部《ぶんがくぶ》の人が立っていた。 「・・・やっと会えたね、ほのかちゃん」 聞き覚えのある声。この人だ。 あの時の声。怖くなる。 でもなんで私の名前を知っているんだろう? 「|矢追冬真《やおいとうま》です。ほのかちゃん、ずっと、ずっと、会いたかった!」 |冬真《とうま》先輩は私の元へ近づいてきた。 どこか狂気じみていて、怖い。 怖くて、逃げようとしたけれど逃げ切れなかった。 ・・・気がついたら|冬真《とうま》先輩に抱きしめられていた。