Loading...

星空の解放日 麦星すばる

夏休み明け

夏休み明け。学校へ向かおうと外に出た途端、見慣れない姿がある。 「おっはよー!キミが|七木大河《ななきたいが》だね」 目の前には無邪気に笑うほのかと同じくらいの背丈の女子が立っている。 髪はほのかと同じくらいのショートヘアだけど、 |古坂《こさか》と同じく前髪の両端から三つ編み。三つ編みはピンクに染まっている。 「・・そうですけど。なにか御用ですか?」 「あ、名前名乗ってなかったね!ボクは|古坂桃羽《こさかももは》!キミもさボクたちと一緒に暴れない?」 「|星天祭《せいてんさい》で暴れるっていうあれですか?」 「そう! キミがいれば心強い!どうかな?」 「俺、これ以上の立ち話は遅刻になるんで」 会話を聞き入れないように 俺は歩き出そうとすると、|桃羽《ももは》先輩はにっこり笑って、オレに向かって言う。 「分かった。じゃあ学校終わったら、ボクの家に来て。 くるみの友達なら住所とか分かるでしょ?それじゃまた後で」 桃羽先輩はるんるんとスキップをしながらそのまま立ち去ってしまった。 「・・・・・・・・学校、行くか」 ―学校がはじまった。 いよいよ、今日から学校。 流星群の日には色んなことがあったけれど、 夏休みに先輩たちとカラオケに行ったり、宿題を教えてもらったり、充実した! |湊《みなと》くんとは学校では一緒に行動しないほうがいい とめりの先輩に止められているので学校では会えそうにない。 取り巻きの人もいるし、この間みたいにカバンを隠されるような事件があれば危険だから、 学校では距離を置こうということになっている。 「おはようございます!いなほちゃん!」 「おはよう、くるみちゃん!」 くるみちゃんは流星群の日から学校に登校し始めている。 元気になってくれて良かった。 くるみちゃんには・・・二人に返事したこと、言わないほうがいいよね。 言ったらきっと、大騒ぎしちゃうか、くるみちゃんを傷つける。 |大河《たいが》には友達でいて、|湊《みなと》くんには好きと言ってしまったのだから。 頑張って、いつも通りでいよう。 ・・・ただ、|大河《たいが》がまだ来ていない。 ぼんやりしていると|流星《りゅうせい》くんがこちらに近づいてくる。 「おはよ、ほのぴ!|大河《たいが》が来てないなんて珍しくね?いつも朝早いよな」 「|流星《りゅうせい》くん、おはよう。そうなんだよね・・今日、|大河《たいが》見てないの」 くるみちゃんが「ほのぴ・・?」と言いかけたので、くるみちゃんを抑える。 私はくるみちゃんの機嫌を取るように、笑顔を作る。 「あ、私がそう呼んでいいって言ったの。だから気にしないで」 「まあ、それでしたら・・・|秋月《あきづき》くんがほのかちゃんに対して馴れ馴れしいとか思ってませんので」 「あーー!!くるみさん、本音が出てますから!!」 「ほら、私を名前で呼ぶなんて馴れ馴れしいですわ!」 |流星《りゅうせい》くんが叫ぶと周囲に笑いがあふれる。 |流星《りゅうせい》くんは興味本位で 女の子の情報を集めていたけれど、今はすっかりやめている。 でもそのために女の子に敬語で話していた癖は残っているみたいで、 私以外の女の子にはつい敬語になってしまうみたい。 というかなんで私にはタメ口なの!? まあそれはおいといて、 |月華《つきか》先輩をいじめた犯人はしし座の力を持つ |古坂桃羽《こさかももは》先輩で、くるみちゃんのお姉さんだから、 |流星《りゅうせい》くんも名字で呼ぶとややこしく感じたのだろう。 もうすぐ遅刻になってしまう、そんなタイミングで|大河《たいが》は来た。 「おはよう、|大河《たいが》。何かあったの?」 「ん? ちょっと寝坊しただけ」 |大河《たいが》はいつもどおりに見えるけれど、やっぱり元気がない。私のせい・・かな。 |大河《たいが》は子どもに怖がられたことがあるからと、お面をつけていたんだけど今日はお面をつけていない。 「お面、どうしたの?」 「お面、やめることにした。気持ちの切り替えってやつ」 今までお面をつけていた|大河《たいが》のイメージが 強かったけど、お面を外した|大河《たいが》はどこか大人っぽく見える。 これが本当の|大河《たいが》なんだろうな。 子どもに怖がられたくないからお面をつけていたんだもんね。 そして、チャイムが鳴り夏休み明け最初の授業が始まる。 |十蟹《とがに》先生がいつものように穏やかな口調で話し始め、いつものように授業が進む。 あっという間にお昼になったんだけど、いつもの場所に |大河《たいが》、くるみちゃんがいるのはいつものこと・・・ なんだけど、そこに|流星《りゅうせい》くんがいる。 「|秋月《あきづき》くん、どうしてここにいますの!?」 「ほのぴ達と仲良くなりたいから!」 「|秋月《あきづき》くん、ほのかちゃんの隣は私ですわ!」 くるみちゃんと|流星《りゅうせい》くんが場所取りで喧嘩をしている。 私と|大河《たいが》は呆れながら二人を見ている。 「まあ、ほのぴ達と仲良くなりたいっていうのはホント。 でもさ、星座の力の話とか教室でできないじゃん? この場所なら情報共有もしやすいかなって。まだなんも情報ないけど」 「うん。|流星《りゅうせい》くんの言う事は分かるよ。人気がない場所がいいよね」 「悔しいですが、お姉様はいじめの加害者ですから 学校で名前も出しづらいですし・・こういう場所でしたら 共有しやすいですわね・・・ね、|大河《たいが》くん?」 上の空になっている|大河《たいが》にくるみちゃんは話しかける。 |大河《たいが》は「ああ」とうなずいていたけれど、心ここにあらずという感じだった。 なにか気付いたことがあればお昼休みにここで話すか、 図書室にめりの先輩がいるとき共有する、ということになった。 放課後。私は部活動に入っていないので、いつものように一人で帰る。 |湊《みなと》くんたちがいる弓道部の様子も気になったけど、今弓道部の方を見たらきっと何か言われる。 学校を出たあと、後ろから人の気配がする。振り向いても誰もいない。 歩いても歩いても、誰かがいる気配がする。振り向くと・・やはり誰もいない。 怖くて、駆け込むように家に入った。 「もうすぐ、君に会えるよ。ほのかちゃん」 ―|古坂《こさか》邸 |古坂《こさか》の家は舞踊の家と聞いていたけれど、本当に大きな屋敷なんだな。 俺は|桃羽《ももは》先輩の言葉が気になり、|古坂《こさか》の家に来た。 ただ、|古坂《こさか》の話によると二人は別の屋敷で暮しているとか。 俺はどっちがどっちに住んでいるか屋敷を見ただけでは分からない。 屋敷を眺めていると、|桃羽《ももは》先輩が現れた。 「来てくれたんだね!|大河《たいが》!こっちこっち!」 俺は走る|桃羽《ももは》先輩についていく。奥には同じような屋敷がある。 ここに一人で貸し切りで住んでるのか?|古坂《こさか》の家ってすごいんだな・・。 屋敷の中を案内され、そのまま|桃羽《ももは》先輩の部屋と思われる場所に行く。 そこには、|天文部《てんもんぶ》の制服を着た生徒がいた。 |天文部《てんもんぶ》の女子が|桃羽《ももは》先輩に声をかける。 「・・|桃羽《ももは》先輩、この人って・・」 「んー?見て分からない?|七木大河《ななきたいが》だよ。 あっちのメンバーと仲良しさんが多いからスパイとして使えないかなーと思って連れてきた!」 なるほど。俺をスパイとして使いたいわけか。 確かにほのか、|湊《みなと》、|古坂《こさか》、|流星《りゅうせい》、なおき、先輩たちとも面識はあるし スパイとしては都合がいいだろう。 「|桃羽《ももは》、スパイの前にそもそも本人は、やりたいといったのか?|稲荷《いなり》や|瀬名《せな》と仲が良いじゃないか」 「|咲夜《さや》、やりたいもやりたくないもないよ。やってもらうんだよ!」 「はあ、そんな偉そうな態度だとみんなに嫌われるぞ」 黒く長いポニーテールの天文部の|咲夜《さや》さんが|桃羽《ももは》先輩と話している。 でも|咲夜《さや》さんはどこかで見たことがあるような。 |桃羽《ももは》先輩は何が何でも俺をスパイ役に持ってきたいらしい。 |桃羽《ももは》先輩は不機嫌そうだが、わがままな子どものようにも見える。 俺はあえて何も口を挟まず、様子を見ていた。 「|瀬名《せな》ってことは・・・|湊《みなと》くんと仲がいいんですか?」 |瀬名《せな》という言葉に対して、さっきの天文部の女子が反応する。 「・・えっと、習い事が小学校の頃一緒だった」 俺がそう返すと彼女は「そうだったんですね、いいな・・」と微笑みかけている。 |湊《みなと》のファンか? まあ、|湊《みなと》のファンって多いから誰が誰だか分からないけど。 「|大河《たいが》!スパイやって!」 「やることで俺にメリットがあるんですか?」 |桃羽《ももは》先輩のわがままな問いかけに俺は思わず感情的になってしまった。 「ほら、誘い方がなってない。|鈴原《すずはら》たちの動きの情報を教えてくれたら、 こちらの情報も教えるよ。それでどう?」 「えー!こっちもバラしちゃ意味ないじゃん!」 「|桃羽《ももは》!メリットがない誘いには誰も乗らない、それが分からないのか?」 |桃羽《ももは》先輩に補足するように咲夜さんが口を挟む。 |桃羽《ももは》先輩の情報が入るなら、悪い話ではないかな。 ほのか達には悪いけど。 「分かりました。動きがあればお話します。そちらの情報も教えて下さい」 「話が分かって助かるー! ボク、学校にいないから咲夜に話してくれると助かるよ」 「私は|見弓咲夜《みゆみさや》。天文部。 部活は・・|瀬名《せな》、|辰巳《たつみ》と同じ弓道部で部長だ。 星座の力は、いて座。内緒にしてくれ」 見たことがあると思ったら、弓道部の先輩だったのか。 俺は星座の力もないので普通に名前だけ名乗る。 もう一人の女子に目を向けたら、ビクビクとしていて会話すらできなかった。 |桃羽《ももは》先輩って呼んでたから、同い年かもしれない。 今日は解散ということになり、俺は屋敷を出た。 |古坂《こさか》に見られてなければいいけど。 俺は周りの様子を見ながらそのまま家に帰った。 ごめんな、ほのか、|湊《みなと》。