星空の解放日
麦星すばる
名前
私は|流星《りゅうせい》くんに呼ばれて図書室に来たものの、|流星《りゅうせい》くんのさそり座の力で気絶してしまった。
そこにめりの先輩、|湊《みなと》くん、なおきくん、そして|大河《たいが》が来てくれてなんとかなったんだけど・・・。
まさか|流星《りゅうせい》くんがさそり座の力を持っていたなんてびっくり。
ちょっとフレンドリーすぎて、女の子好きっていうのが玉に瑕だけど、協力してくれることになった。
そんな帰り道。
「ねえねえ、ほのぴ!好きな食べ物なに?」
「えっと、お母さんとおばあちゃんが作ってくれるものなら何でも」
「好き嫌いあんまりないのすごいね!俺、ピーマン苦手なんだよね」
「野菜は食べなきゃだめだよ」
私は|流星《りゅうせい》くんの話し相手になっている。
後ろでは|湊《みなと》くん、なおきくん、|大河《たいが》、めりの先輩がなにか話しているみたい。
「|七木《ななき》くんみたいな人が星座の力に目覚めてくれたら良いんだけどなあ」
「しし座の力みたいにおすそわけできたらいいんですけどね」
「まあ、星座の力って選ばれたものにしか宿らないんだろ?
そんな都合よくもらえるもんじゃないって。力がなくたって、協力はするよ」
「あと分かってないのが、おうし座、てんびん座、いて座、やぎ座、みずがめ座・・ですけど、
|桃羽《ももは》さん側についてる人、|秋月《あきづき》くんみたいに目覚めているけど僕たちと接点がない人、
まだ星座の力が目覚めていない、いろいろな可能性があるね」
「|湊《みなと》、深く考え込むなよ。なるようになるって」
ちょっとだけ|大河《たいが》たちが喋っていることが
聞こえたけれど、|流星《りゅうせい》くんは本当によく喋るなあ。
私のことをいっぱい聞かれた気がする。
「それじゃ、俺こっちだから!ばいばーい!」
|流星《りゅうせい》くんは何事もなかったかのように帰っていく。自由すぎる。
私が「はあ」とため息をつくと|大河《たいが》は「お疲れ」と私を労ってくれた。
「|秋月《あきづき》も悪いやつじゃないんだろうけど、クセがあるよなあ」
「うん。同じクラスなのにあまり話したことがなかったからびっくり」
「でも接するときの距離感って大事じゃないですか?
しつこかったらほのかさんもきちんと断ったほうがいいですよ」
なおきくんはそう言って自分の家に向かっていく。
|湊《みなと》くんはめりの先輩と話してるみたい。
「|瀬名《せな》くん、大丈夫?なんかぼーっとしてるみたいだけど。
|稲荷《いなり》ちゃんは|秋月《あきづき》くんに取られたりしないわ。
あの接し方は本命じゃなくて面白がってるだけよ」
「・・・だから、心配なんです。文学部にああいう人がいるとは思ってなくて」
「まあ天文部って割と静かめな人が多いしなあ。
でもそこは|七木《ななき》くんがなんとかしてくれる。
それに|稲荷《いなり》ちゃんと電話番号くらい交換してるでしょ?電話でもしてみたら?」
会話はよく聞こえなかったけど、|湊《みなと》くんがびっくりしたような顔をしているのが見えた。
めりの先輩は「私、こっちだから帰るわね、お疲れ!」と言って帰っていってしまった。
残っているのが、私、|湊《みなと》くん、|大河《たいが》。
なんだけど、|大河《たいが》は家が隣同士だからこのまま一緒。
ちょっと緊張する、かも。
「あの、|稲荷《いなり》さん、大丈夫?|秋月《あきづき》くんとたくさん喋ってたみたいだけど」
「大丈夫だよ、おしゃべりは好きだから!」
「そうじゃなくて、その・・・。ううん、なんでもない。じゃあ、気を付けて。お疲れ様」
|湊《みなと》くんは走って帰っていってしまった。|大河《たいが》と二人で帰るのは久々だ。
「|秋月《あきづき》がほのかに変なことしたら、俺がなんとかするから。
一応、星座の力の持ち主だから敵に回したくないよな」
「そうなんだよね。今は私に興味があるみたいだけど、
他の子に興味が湧いて敵になったらいやだなって思ってたんだ」
「そっか、思ってるよりほのかはしっかりしてるじゃないか」
「え?それって褒めてるの?」
|大河《たいが》は「まさか」と笑いながら歩いていく。
|大河《たいが》の歩くスピードが少し速くなったので、私も歩くペースを上げる。
「ご、ごめん。ちょっと急ぎ足になっちゃったな」
「ううん、気にしないで、|大河《たいが》もなにか考え事?」
「いや、ほのかのカバンは隠されるし、|秋月《あきづき》に狙われるし、これ以上ほのかの身に何かあったら心配だなって」
「大丈夫だよ、|大河《たいが》も|湊《みなと》くんも先輩たちもいるから。ありがとう」
その後は他愛のない話をしながら進んでいく。
あっという間に|大河《たいが》の家が見えたのと同時に玄関から天音ちゃんが出てくる。
「お兄ちゃん!遅くなるなら朝のうちにちゃんと言って!」
「悪いな、天音。急用ができちゃって。ほのか、また明日」
私は「また明日」と返し、|大河《たいが》と別れる。
私も例外ではなく、家に着いたらお母さんに「帰りが遅くなる日はちゃんと言う事!」と怒られてしまった。
そりゃそうだよね。気をつけないと。
星座の力に関することになると、どうしても夕方とかになってしまうから。
自分の部屋に戻ると、ずっといっしょにいるうさぎのぬいぐるみと
|湊《みなと》くんとおそろいのイルカのぬいぐるみが私を見つめている。
棚には|大河《たいが》が取ってくれた招き猫のぬいぐるみがいる。
「ただいま・・」
私はぐったりして、そのままベッドにうつ伏せになる。
|流星《りゅうせい》くん喋り過ぎだよ・・。
いつも目立ってる存在だとは思っていたけど、ここまでとは・・。
ぼーっとしていると私の好きな音楽が流れてくる。
これはスマホの音。
学校へは校則で持ち込み禁止になっているから
持っていってないけど、一応持っている。
誰からだろう?
「はい、もしもし」
「もしもし、|瀬名《せな》ですけど・・|稲荷《いなり》さん?」
電話から|湊《みなと》くんの声が聞こえてくる。
|湊《みなと》くん!?夢でも見てるんじゃないかな!?
・・って電話番号交換したんだった!
「うん、私!電話してくれてありがとう。どうしたの?」
「え、えっと・・大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。|湊《みなと》くんも大丈夫?」
「僕は・・平気。ただ、|稲荷《いなり》さんが僕と|大河《たいが》以外の男子と話してるのを見ると心配になるよ」
途中から声が小さくなってよく聞き取れなかった。え?なんて言ったんだろう。
「ごめん、なんでもない。・・そうだ、宿題終わった?分からない所があれば教えるよ」
「本当!?さっき寝落ちしそうだったから助かるよ、お願いしてもいいかな?」
私は|湊《みなと》くんのお言葉に甘えて宿題を教えてもらった。
電話越しでも|湊《みなと》くんの説明はわかりやすい。
問題文を伝えただけで、解説ができるってすごいよ!
|湊《みなと》くんのおかげで宿題が終わった。
「ありがとう!これで最後の問題だったんだ。助かるよ、|湊《みなと》くん!」
「お役に立てて良かったよ」
少し間が空いて|湊《みなと》くんの声がする。
「あの。電話のときだけでいいから、名前で呼んでもいい、かな?みんなには内緒にしてね」
「え?・・うん、いいよ」
私は何も考えずに「いいよ」って言ってしまった。
・・・あれ?「名前で」・・・あれ?
「それじゃ、おやすみ、ほのかさん」
|湊《みなと》くんが私の名前を呼んで電話を切ってしまった。
え・・今まで「|稲荷《いなり》さん」って呼んでたのに「ほのかさん」って名前で呼んでくれた!?
耳元で近く響く|湊《みなと》くんの声はしばらく離れなかった。
そのあと、うさぎのぬいぐるみとイルカのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめぼんやりとしていた。