星空の解放日
麦星すばる
流星群の日-告白-
外に出ると、空には流星群が見える。すごくきれい。
私の思いはこれまで湊くんを思っていた人を傷つけるかもしれない。
それは、私も悲しい。
けれど、それ以上に私は・・・。
だから私は湊くんに私の思いを伝えるんだ。
湊くんが私に伝えてくれたように。
「湊くん・・えっと、聞いてくれる?私なりの答え」
「うん」
湊くんは静かにうなづく。
最初の一言が出ない。でも言わなくちゃ。
「私、湊くんが好き」
湊くんは驚いた様子で私を見つめている。
それでも、思いは止まらない。
「最初は憧れで遠くから見ているだけだったけど、
初めて話した時に疲れてる湊くんを見て心配だったけど・・
少しずつ湊くんの明るい一面を見れて今まで知らなかった湊くんを知れて嬉しかった。
知るたびにドキドキした。初めて気づけたこと、知ったことがいっぱいあったの」
湊くんと初めて話した日のこと。一緒に登校した日のこと。
星座の力をきっかけに話せるようになったこと。
「お手紙もクッキーもすごく嬉しかった。お勉強会も水族館もすごく楽しかった。
湊くんと過ごせた時間が大切な宝物なんだ」
一緒にお勉強会をしたこと。水族館に行ったこと。
「実はねお勉強会でくるみちゃんに湊くんに恋をしてるんじゃないかと言われたの。
その時、みんなの前だったから顔が真っ赤になるくらい恥ずかしかったんだ。心配かけてごめんね」
私の家でお勉強会をしたとき、くるみちゃんがちょっといじわるなことを言っていたこと。
その一言で恥ずかしくて、顔が熱くなっていたこと。
「湊くんも言ってたけどお互いの知らない部分はこれから少しずつ知っていきたい。
私も湊くんの好きなものとか分かってないから教えてもらえたら嬉しいな」
私も言いたいことを言えば言うほど、何を言っているのか自分でも分からなくなる。
そんな中、湊くんや大河は伝えてくれたんだよね。
「勉強も苦手だし手先も器用じゃない。
そんな私でもよかったら・・・ダメでもお友達でいられたらそれで・・・」
そう、私は本当に勉強も得意じゃないし、湊くんみたいに器用ではない。
これといって得意なことがないから、湊くんとは釣り合わない子・・・なんだよね。
考えているうちに、どんどん辛くなってきた。
やっぱりごめんねと言われたらと思うと、悲しくなってきた。
泣きそうになったとき、湊くんは私の手を握った。
「・・断る理由なんてない。
でも本当に僕でいいの?僕は稲荷さんや大河の優しさに甘えていただけだったんだ」
「そんなことないよ。湊くんは優しいからもう少し誰かに頼ったり甘えていいんだよ。
・・それにこういう風に思えるのは湊くんだから。
湊くんのこと考えるとずっとドキドキしてた。
お話できた時いつも嬉しかったの」
「そう、かな。そうならいいけど・・。僕も稲荷さんのことを考えるとドキドキしてた。
今も・・してる。そして稲荷さんの笑顔に何度救われたか」
勉強も教えてもらってばかりで、たくさんもらってばかりで
私に何ができていたんだろうと思うと、やっぱり泣けてきちゃうよ。
「ありがとう、湊くん。すごく、すごく嬉しいよ!
湊くんに変って思われたらどうしようって心配だったから」
「それを言ったら僕も同じ。
あの時稲荷さんを驚かせてしまって
その後もずっと大丈夫だったのかなっていつも緊張してたんだから」
湊くんは私が涙を浮かべているのに気づいて、ハンカチを貸してくれた。
そして、湊くんはやっぱり気づいたんだ。
「・・あの、稲荷さん。僕にこういう話をするってことは・・大河は・・・」
「大河には友達でいてほしいってお願いした。
私のわがまま。だけどこれからもよろしくって言ってもらえたよ」
「そうか・・・」
「大河は大丈夫。私よりもずっと強いから。
湊くんのことも応援してたし私が支えてやれって言われたよ」
大河はいつも通りでいることの大切さを教えてくれた。
そして、星座の力もなくて、昼間私があんな事を言ったのに駆けつけてくれた。
「いつも大河を見てきたもの。・・だから大丈夫。
湊くん、あのね、もうひとつ聞いてほしいことがあって。
私のこと電話以外でも名前で呼んでほしいな」
電話で名前を呼んでくれたとき、すごく嬉しかった。
私も名前で呼んでいるし、だめかな、っていう気持ちがどこかにあった。
「・・いいよ。それで喜んでもらえるなら。
でも学校にいる間や二人きりじゃないときはいつものように苗字でいいかな?
呼び慣れてなくて緊張するし・・二人だけの秘密があった方がいいでしょ?」
「うん。無理なお願いしてごめんね」
二人だけの秘密、って、すごく、ドキドキする。
湊くんの方を見ると、湊くんは顔を真っ赤にさせている。
「い・・、ほのかさん」
「ありがとう、湊くん。湊くんに名前を呼んでもらえて嬉しかったの」
「そっか、なら勇気を出してよかった。僕も早く慣れなきゃね」
湊くんは相当緊張していたようで、深呼吸していた。
「湊くんのペースでいいよ。あの、|星天祭《せいてんさい》が終わるまで
学校ではあまりお話出来ないかもしれないから電話したり遊びに行ってもいい?」
「もちろん。僕も遊びに行きたいな」
「いいよ。あ、おばあちゃんはお勉強会の時、外に出てたから湊くんのこと、知らないかも」
「そういえばいらっしゃらなかったね。僕も挨拶したいから機会があれば」
「うん、その時はよろしくね」
おばあちゃんが湊くんを見たらすごく喜ぶだろうなあ。
湊くんのお母さんもすごく美人さんだし、また会いたいな。
「ご、ごめんね。帰り道でこんなに時間取っちゃって。
でも聞いてくれてありがとう。嬉しかった。私は幸せ者だよ。またね、湊くん」
「こちらこそ聞かせてくれてありがとう。
僕もほのかさんの答えが聞けてすごく嬉しい。
遅いから気を付けて帰ってね、それじゃあまた」
流星群を見ていないと、胸のドキドキが落ち着きそうにない。
上ばかり見ていたら、電信柱にぶつかりそうになった。
「湊くんに伝えてしまった・・・。
名前で呼んでほしいって言っちゃったけど、いざ呼ばれるとドキドキするよ。
いいよって言われたことが信じられない・・夢?じゃないよね?
そして湊くんから貰った袋・・何が入ってるんだろう?」
湊くんに伝えられたことが嬉しかったけれど
何より、二人にちゃんと返事ができたことが一番安心した。
「好き」でいるだけで、嬉しくなる。
「好き」を伝えるだけで、色んな感情が巡る。
「好き」が伝わるだけで、すごく安心する。
だから、「ごめんね」と言うだけで
「ごめんね」と言われるだけで
すごく傷つくし、すごく苦しくなる。
それでも、前に進まなきゃいけない。
それが「好き」でいる、ということだと思うから。
家に着いたら、部屋に入り湊くんから家で開けてと言われた袋を開ける。
中にはアイシングクッキーと手紙が入っていた。
アイシングクッキーは、イルカ、星、鈴、リボンと私の好きなものがいっぱい。
ラッピングも丁寧で開けるのがもったいないくらい。
「すっごく可愛いけど・・どこかのお店で買ったのかな?
お手紙もついてる。えーっと、なになに?」
シーリングスタンプで止めている手紙を開ける。
このスタンプは湊くんの手作りだろうな。
「アイシングクッキーを試作してみました。お口に合えばいいのだけれど。
良かったらあとで感想聞かせて欲しいな。
僕からも電話するつもりだけど新しい電話番号も添えておくね」
クッキー、て、手作りだったんだ!アイシングクッキーってすごく難しいよね!?
試作のレベルじゃない。
湊くんの女子力というか手作り力がアップしてるよ!
クッキーはイルカさんたちと写真撮ろうかな。
電話番号は忘れないうちに更新・・っと。
すごく、素敵なものをもらってしまったけど、私もなにかお返しできないかな。
でも、手作りでできることがないし・・・。
そうだ。おばあちゃんが編み物やってるんだよね。
教えてもらおうかな。