星空の解放日
麦星すばる
流星群の日-特訓-
特訓の前に湊くんが作ったクッキーを食べる。
大河は星華先輩と月華先輩に剣道を教わろうとしていた。
そこには、やっぱり流星くんもいる。
「剣道、私達で良ければ教えるわ」
「おい、抜け駆けはずるいぞ、大河!
月華先輩に近づこうだなんてそうはさせないんだからな!」
「はあ?何言ってるんだ?俺、流星と違って星座の力ないし、
剣道でもやってなきゃ足手まといだろ」
「あなたも大河くんを見習わないとね、じゃないとシメるから」
「分かりました、真面目に特訓しますから!」
流星くんを見ていると、大河の方がずっとしっかりしているように見えてしまった。
星華先輩と月華先輩も教えるつもりだったようで竹刀を持ってきていた。
「・・・剣道っていっても、星座の力を使う人が相手なら
剣道通りじゃなくても竹刀を振り回せばなんとかなるかもしれないけどね」
「いや、俺、剣道はやったことがないので、
その竹刀を振り回すのも怪しいかもしれないです・・」
大河は星華先輩に慣れない敬語で話している。
星華先輩は「まあまあそう固くならずに」と竹刀の握り方から大河に教えていた。
「じゃあ、みんな!栄養補給もできたことだし、特訓しましょうか!
七木くんは竹刀で羊をぽかっとするだけでいいわ。
あとのみんなは星座の力を使って羊をなんとかしてちょうだい」
めりの先輩が手を合わせると、羊がたくさん現れる。
白い羊、茶色い羊、黒い羊・・数えればきりがない。
そしてめりの先輩はいつもの大きな羊に乗って浮かび始める。
「羊たちいきなさい!」
めりの先輩が使役した羊に触れると眠ってしまう。
桃羽先輩は、しし座の力を持っていて
その力を使って、多くの仲間を従えている。
だから、頭数ではかなわないかもしれない。
その頭数をめりの先輩の羊で再現している、とのこと。
星座の力がうまく使えなければめりの先輩の羊に眠らされてしまう。
羊を相手に流星くんが立ち向かう。
流星くんはさそり座の力で触れた相手を気絶させることができる。
この力で私も気絶させられたことがある。
「うっしゃ!いくぞー!」
流星くんが拳を羊に当てる。
羊も消えてしまったけれど、流星くんも眠ってしまった。
その様子を見てめりの先輩がため息をつく。
「私の羊も触れた相手を眠らせるし、
秋月くんの力も触れた相手を気絶させるから・・・。
直接触れる者同士だとちょっと厳しかったか」
眠っている流星くんを見て今度はなおきくんが羊に立ち向かう。
「・・今回は治癒ではなく、へびを使役して戦ってみます!」
なおきくんのへびつかい座の力は治癒能力とへびを使役して戦うことができる力。
治癒能力で眠っている流星くんを起こすこともできるけれど
なおきくんは羊に触れると眠ってしまう流星くんを
起こすのは賢明じゃないと判断したみたい。
へびたちが羊に噛みついて、羊が消えていく。
なおきくんは「やりました!」とガッツポーズをしている。
私はおとめ座の力で植物を操ることができるけれど
今回は・・・あ、あれ?植物が枯れていく・・・?
そう、私の力は植物を操れるけど感情が揺さぶると植物は枯れてしまう。
その様子をめりの先輩がじっと見ていた。
そっか、昼間大河に返事して
今日もどこかで湊くんに返事しなくちゃって考えすぎてるかも。
この間、先輩に相談乗ってもらったのにな・・。
なんとかしなくちゃと思っている間に、羊が現れる。
触れたら、眠っちゃう。動かなきゃ!と思ったその時。
「稲荷さん!!」
湊くんが水の盾を作って守ってくれた。
湊くんのうお座の力は、自分自身を魚や泡にしたり、水を操ることができる。
最初は静かな場所で過ごしたくて、
自分自身を魚や泡にすることが多かった湊くんだけど、
少しずつ力の使い方が変わってきて、水を操ることが増えてきている。
「ありがとう、湊くん」
「どういたしまして。今なら力、使えるんじゃない?」
水の盾に守られている今なら、力、使えるかも。
私は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
すると、植物がどんどん芽吹いていき、羊を攻撃していく。
「上出来じゃない、稲荷ちゃん」
星華先輩と月華先輩は光でできた剣で羊たちを倒していく。
ふたご座の力は二人で息を合わせることで力を発揮するんだって。
二人とも息があっていて、動きがとても美しく見える。
後ろには竹刀を持って走る大河がいた。
「さあ、大河くん!やってみて!」
星華先輩がやってみせた動きを大河が真似する。
竹刀が羊に当たり、羊は消えていく。
「初めてにしてはすごいじゃん!」
「ありがとうございます、意外と竹刀って重たいんですね・・」
大河が竹刀を持つ手はどこか震えていた。
星座の力を持たない大河は、普通の人として戦っているから
私達よりもずっと大変なんだよね。
そして、羊は残らず消えてしまい特訓も終わり。
めりの先輩が乗っていた大きな羊も消えてめりの先輩は着地する。
「みんな、お疲れ!約一名を除いて、バッチリだったわ!」
めりの先輩は拍手する。約一名、というのは眠ってしまった流星くんのこと。
月華先輩はすごく怒った顔で流星くんを睨んでいる。
「・・真面目に特訓するって言ったわよね?」
「ごめんなさい、力の相性が悪すぎですってば!」
「それを何とかするのが特訓よね・・・?」
「本当にごめんなさい!」
そのやり取りを見て、みんなが笑い始める。
流星くんの力はすごいけれど、直接相手に触れないと
効果がないというのも大きな課題になった。
「大河もすごかったよ、竹刀持つの初めてって本当?」
「ああ。弓道部から弓矢を借りるのは危ないし、流星は今空手部じゃないし・・
となると、剣道部から竹刀借りるのがいいかなって思ってさ。
鏡宮先輩も剣道部だから教えてもらえそうだったし」
「そっか、ありがとう」
大河は星座の力もなく、剣道をやったことがないのに、駆けつけてきてくれた。
私は、色々考え込んでしまったのに、大河はいつも通りだった。
いつも通りでいる努力をしようって思ったばかりだったのにまだまだ未熟だな。
「あのー・・僕、そろそろ帰らないと祖母がうるさいと思うので・・帰って大丈夫ですか?
その、学校行事とはいえ、外も暗くなってきてますし・・」
なおきくんが恐る恐る言う。
なおきくんの家はおばあちゃんが
とても厳しいから、帰りの時間は人一倍気にしている。
「いいわよ!特訓もできたし、天体観測に参加したい人は残っていいし、帰りたい人は帰ってよし。
みんな忙しいのにありがとね、今日はお疲れ!」
めりの先輩が「解散!」と言うと、なおきくんは急いで帰り支度をして
「また学校で!」と言ってそのまま帰っていってしまった。
流星くんは月華先輩に「一緒に帰りましょう!」
としつこく言っていたみたいだけれど
それを見ためりの先輩に止められて、
何故か大河といっしょに帰ることになった。
めりの先輩、星華先輩、月華先輩もそのまま帰って、
残ったのは、私と湊くんだけになってしまった。
「良かったら、一緒に帰ろうか。稲荷さん」
「う、うん」
言うならこのタイミングしか、ない、よね。