星空の解放日
麦星すばる
流星群の日-昼-
すごく、ドキドキする。
夏休みの登校日、流星群の日が来てしまった。
嬉しいことは夏休み前に休んでいたくるみちゃんと会えること。
ドキドキしている理由。
今日、私は大河と湊くんに告白の返事をすると決めているから。
大河は家が隣だし、いつでも良かったと思うけれど
大河の家は天さんや天音ちゃんもいてにぎやかだから
そんな中、大河を呼び出すのはちょっと・・と戸惑ってしまって
あっという間に今日になってしまった。
流星群の日は天体観測も兼ねて夜の学校が開放される登校日。
午前は全員登校、夜に関しては任意参加。
くるみちゃんは家の都合で夜は会えないけれど
大河と湊くんには会えそうだから、伝えなくちゃ。
いつものように家を出たら、大河が待っていた。
「おはよう、ほのか」
「お!おはよう、大河!大河も今行くところ?」
「ああ・・そうだけど。なんか今日のほのか、おかしいな?」
「そ、そんなことないよー!!・・じゃなかった!
大河、午前の学校終わったら、中庭に来てくれないかな、話したいことがあるから!」
大河はお見通しだ。
私は大河と待ち合わせの場所をなんとか決めた。
小清水さんが告白されていた、あの中庭。
「分かった。古坂は今日学校来るのかな?」
「うん、午前だけ顔出すって。良かった!」
他愛のない話をしながら一緒に歩いていく。
これがいつも通り、だったんだよな・・。
といっても、私が寝坊したり早起きしたり
湊くんが先に来てくれたり大河と二人で登校することは減ってた気がする。
校門が見えてくると、なおきくんが近寄ってくる。
「おはようございます。ほのかさん、大河さん!
今日はお二人共夜の学校にはいらっしゃるんですよね?よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。呼び方、なおきでいい?」
「はい、構いませんよ。僕はこのまま大河さんと呼ばせてください」
大河は「呼びやすい呼び方でいいよ」となおきくんに優しく言う。
なおきくんは「それではまた夜に!」と言って天文部の校舎に向かっていった。
私達は文学部の校舎にそのまま入る。
教室にはくるみちゃんがいた。
私達はくるみちゃんのもとへ駆け寄る。
「くるみちゃん!久しぶり!!・・電話でお話したけどね」
「いなほちゃん!やっぱり実際にお姿を拝見できる方がずっとずっと嬉しいですわ!」
くるみちゃんは私を抱きしめる。
いつもよりも元気そうだった。
元気で良かった。本当に良かった。
「古坂、本当に大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですわ。大河くん、ご心配をおかけしました」
「なら良かった」
いつもの三人で会話をするとやっぱり落ち着く。
話しているうちにあっという間にチャイムが鳴り、|十蟹《とがに》先生が入ってくる。
「おはようございます、ピース。今日は流星群の日ということで、
夏休みなのにご足労いただきありがとうございます、ピース。
みなさんがお元気そうで何よりです。
宿題がまだの方は余裕を持って終わらせてくださいね、
それでは今日は以上になります。
夜の天体観測への参加は任意となっておりますので、
夜も参加される方は準備をしてからまた学校に来てください、ピース」
|十蟹《とがに》先生はそれだけ言い残してそのまま去ってしまった。
登校日といっても、顔合わせのようなもので、あっという間に終わってしまった。
くるみちゃんの前には流星くんが立っていた。
「古坂さん!体調は大丈夫ですか!?」
「おかげさまで、元気ですわ。・・・であなたはどちらさま?」
「えー!!同じクラスなのに、知らないの!?俺、秋月流星だよ。さそり座の・・」
流星くんの声が大きくなりそうだったのに気付いた大河が流星くんの口をふさぐ。
流星くんはそれで我に返ったようだった。
星座の力のことが周りに知られたら大変なことになる。
「サンキュー!大河!」と流星くんが言うと大河はため息をついている。
「・・・秋月流星さんというのですね。覚えましたわ」
「そうだよ、覚えて帰ってー!!」
くるみちゃんは私と大河以外の人とあまり話をしないから
同じクラスの人でも名前を覚えてない、なんてこともある。
女の子は覚えてきたけど、男の子はまだ知らない子が多いみたい。
「それでは、家の用事がありますので、私はこれで。
いなほちゃん、大河くん、夏休み明けにまたお会いしましょうね」
「うん、気をつけてね!くるみちゃん!」
くるみちゃんは一礼してそのまま帰っていった。
流星くんは「俺のことはー!!!」って叫んでいたけれどみんな流していた。
そして私は大河に肩をトントンと叩かれていた。
そうだ、自分から中庭に来てって言っていたのだった。
そして、私と大河は中庭に向かう。
大河に「話ってなんだよ」って聞かれたけれどうまく答えられなかった。
中庭には、花が植えられていて、大きな樹がある。
この樹は学校が開校されたときに植えられた記念の樹で縁起が良い場所とされている。
けれど、私が言おうとしていることは、縁起が良いとは言えないことのような気がする。
大河も流石に気になったようで、私を見て言う。
「どうした?ほのか。こんなところに呼び出して」
私は「えーっと・・」と言葉をひたすら探す。
言うことは日記に書いてきたつもりだけれど
いざとなると言葉が出ない。
大河に言わなきゃいけないこと。
それは、いつも通りの関係でいてほしいことだった。
私は勇気を出して言う。
「大河・・ごめん。私と友達でいてほしいの」
大河は最初、びっくりした顔をしていた。やっぱりそうだよね。
でも大河はすぐに落ち着きを取り戻した。
「・・・いいよ」
大河はただそれだけ言った。
私はびっくりした。
「え・・・?」
状況の理解ができていなくて、思わず言ってしまう。
「俺はほのかから嫌われなければ、友達でもお隣さんでもなんでもいいよって言っただろ」
「どうして・・怒ったり、色々聞いたりしないの?」
大河の優しい言葉に涙がこぼれそうになる。
あの時から答えが揺らいでいない大河は
本心で言ってくれているんだと分かる。
「友達だから。友達ってそういうものじゃねえの?
湊にもこれから返事するんだろ、頑張れ。あとこれからもよろしく」
「ありがとう、大河。こちらこそよろしくね」
大河と改めて握手を交わす。
大河と友達でいられて良かった。
「湊は抱え込むからほのかが支えてやれよ」
「う、うん・・・?」
「そういう返事をこれからするんだろ?しっかりな」
「うん。大河はやっぱり優しいね。ありがとう、ごめんね」
「謝るなって。ほのかが自由に決められるものってずっと思ってたから」
大河は優しい。普通だったらこんな事を言う
相手の応援なんてする余裕もないはずなのに。
大河のおかげで、いつも通りの会話ができてる。
「今日は夜、登校するの?」
「もちろんだ。鏡宮先輩に剣道教えてもらうつもりだから」
「ありがとう、心強いよ。じゃあまた夜の学校で」
「ああ」
大河は中庭に残ると言っていたので、私は先に中庭をあとにする。
大河の後ろ姿を見ると胸が苦しくなる。
思いを伝えることってこんなに苦しいの?
私は、もう一人思いを伝えなければいけない人がいる。
ちゃんと伝えられるかな。
—中庭の樹にて
「友達か。まあいつも通り、だよな。これからも二人の友達でいよう」