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星空の解放日 麦星すばる

祝福の星空

「・・・どういうこと・・? 島香先生がどうして・・? 湊くんの体、消えてしまいそうだし・・・」 私は何が起こっているのか、よく分からなかった。 湊くんを見ていた島香先生が私たちの方を向く。 ニッコリと笑っているけれど、どこか怖かった。 島香先生が手を出すと、長いリボンが現れ、今にも泡になりそうな湊くんと島香先生を結びつけようとしている。 「・・ねえ、邪魔をしないでくれる? 私と瀬名くんはね、このリボンで結ばれているのよ。離れちゃダメなの」 「それが教師のすることかよ!」 大河がリボンから二人を引き離そうとリボンを引っ張ろうとする。 けれど、不思議な力でできているみたいで、大河は弾き飛ばされてしまった。 私たちも逃げるように図書室へ飛び出た。 飛び出た図書室は誰が起動させたのかプラネタリウムの星空が広がっていた。 くるみちゃんが飛ばされた大河を介抱している。 私も、なにかできたら良いんだけれど。何をすればいいの? 湊くんをもとに戻さなきゃ、島香先生を止めなくちゃ。 けど、私に何ができる? 星空に祈りを捧げるように、私は手を合わせた。 すると、十蟹先生が、ピース。って言ったような・・?気のせいだよね。 「・・やめて。やめて!!!」 私が声を上げると、プラネタリウムの星が輝き出し、私の周りには植物が生い茂った。 島香先生と湊くんを結びつけようとしたリボンがツルで結ばれている。 私、何をしたんだろう・・。 何が起こっているかわからないまま、 二人を止めないと、なんとかしないと、 その気持で頭がいっぱいになっていた頃には、島香先生はツルで縛られていた。 湊くんは泡になったかと思えば、魚の姿をして、星空を泳いでいた。 「な、何が起きたんだ・・?」 大河が唖然としていると、影から十蟹先生がひょっこりと現れる。 「ピース、ピース。星座の能力者が目覚めました、ピース」 「の、能力・・・?この葉っぱとか操る能力・・?」 「ぴんぽーん、です。ピース」 十蟹先生は、気持ちが落ち着くとこの葉っぱたち消えるから 深呼吸してみなさい、と言って私を落ち着かせてくれた。 すると、生い茂っていた植物は消えて、島香先生を縛っていたツルも消えた。 「瀬名くんも。もう怖くないから元の姿にお戻りなさい、ピース」 十蟹先生が星空を泳いでいる魚に向かって声をかけると、魚が光を放ち、湊くんの姿に戻った。 「・・・僕はもう息をしても大丈夫?」 湊くんは意識を失っている島香先生を怯えながら見ている。 大丈夫だよと私は湊くんに声をかけて、隣に立った。 もし島香先生がまた近寄ってきたら追い払っちゃう。 「あの、星座の力とはなんですの? 島香先生と湊さんはおそらくうお座の力だと思いますが・・」 「古坂さん大正解、ピース。星ノ川学園に閉じ込められている星を解放すれば不思議なことが起こる。 これはこの学校に眠っている星座の力のこと。瀬名くんと島香先生はうお座の力を持っていて。 うお座の能力は見ての通り、自分の姿を泡や魚にできるのですが。 その能力故に、島香先生は瀬名くんをストーカーのように追いかけていたんですね。 もし興味があれば星座の神話を調べてみてくださいね、ピース」 くるみちゃんがなるほどと頷きながら十蟹先生の話を聞く。 「恐らく、お二人はアフロディーテとエロスの神話のようなことが起こっていたのですね。 逃げる時に離れないように魚の姿に変身し、逃げようとした」 「ええ、そうです。ちなみに私十蟹は名前の通りかに座の力を持っていますが。 みなさんを守ることしかできません。しかも打たれ弱いです。優しくしてくださいね、ピース」 「ピース、ピースって平和ボケしてんじゃねえ、ほのかから植物が生い茂ったのはなんなんだよ!?」 「それはおとめ座の力だと思いますわ。 おとめ座のデーメーテールという女神が豊穣の女神でしたから、植物が生い茂ったのではないでしょうか」 「星座の力・・・」 私はぽかんとしながら、くるみちゃんと十蟹先生のやり取りを聞いていた。 くるみちゃんが十蟹先生とスラスラやり取りできるのもすごいんだけど、この星座の力って何に使うんだろう? 「稲荷・・さん。えっと、僕が夜の学校に来ていたのは、島香先生がしつこくて、その、直接注意するしかないと思ったんだ。 だけど、星座の力がまさか同じとは思わなくて、その結果、こうなった。巻き込んで、ごめん」 「大丈夫だよ! 湊くんが無事で良かった!」 私は思わず湊くんの手を握る。 ・・にぎ・・る・・?と我に返るとお互い手を離して、気まずくなってしまった。 「さて、星座の力がまた目覚めてしまいましたし、みんなにお願いね。 星座の力のことはぜーったい話さないでね。同じ星座の力を持っている人、実はこの学校にいます。 けど、みんな味方じゃないかもしれないから気をつけてね。 夜の学校でバトルなんてしないように、ピース」 「先生! 星座の力が全部解放されたらどうなるんですか!?」 「うーん・・実は先生もわからないの。 先生もこの学校出身で、かに座の力はずっと持っているんだけれど、 12星座揃って何かがおきた、とかそういうのはなかったから・・・。 でも、先生はみんなを守ることはできるから、力を使ってなにかしたいときは先生に言ってね、ピース。 あ、島香先生はどちらにせよ、クビだと思うの。 生徒にストーカーしてるので。そのあたりは先生に任せてください」 十蟹先生はばいばいと手を振って、図書室から出ていってしまった。 島香先生はソファーで眠っている。私達は起こさないようにとだけ言われている。 「しかし、星座の力がこの学校にあるなんて。 そりゃあプラネタリウムがあったり、天文部があったりするわけだ」 「でも、同じ星座の力の人たちとお友達になれたらワクワクするよね!」 「稲荷さん。十蟹先生も言っていたけれど、みんな味方というわけじゃないんだ。島香先生のような人だっていたんだから」 私は、湊くんにごめんと謝る。 天井を眺めるとプラネタリウムは止まっていて、元の図書室に戻っていた。 図書室から出ようとすると、面談会が終わったのか、私達のお母さんがやってきた。 お母さんにも内緒にしないといけないのが苦しいけれど、約束、だもんね。 内緒とか秘密とか聞くとすごくワクワクしちゃう。 学校から出て見上げた星空は、私達を祝福しているように見えた。