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星空の解放日 麦星すばる

受け止める

翌日。 私は中庭を歩いていると、とんでもない場面に遭遇してしまった。 |天文部《てんもんぶ》の男の子と見てすぐ可愛いと分かる|天文部《てんもんぶ》の女の子がいる。 クリーム色の髪、お団子結びで前髪が三つ編み。 瞳は淡い水色で、小柄で守りたくなるような女の子。 小動物みたいな子ってこういう子のことをいうんだなって。 それはさておき、こ、これは告白しようとしているのでは・・。 私は木陰に隠れて様子を見る。 「|小清水《こしみず》!俺、|小清水《こしみず》のこと、ずっと好きだったんだ!つ、付き合ってください!」 「ごめんなさい。私、好きな人がいるから・・。その人に好きな人がいたとしても、私は最後まで諦めない、です」 「その好きな人って|瀬名《せな》だろ、|瀬名《せな》にも好きな人がいるって言ってた。 それが|小清水《こしみず》じゃなかったらどうするんだ?」 「・・それでも、私、|湊《みなと》くんのことが好きですから・・」 「どうして、そこまで・・」 |湊《みなと》くんが好きな子!? もしかして取り巻きにいた子かもしれない。 「私、小学生の頃から|湊《みなと》くんが好きなんです。 クラスもずっと違ったし、今も違うけど、それでも・・|湊《みなと》くんのこと、諦めません。 今日告白します」 「そ、そっか・・がんばれよ」 男の子は去っていった。女の子は「ふう」と一息ついたあと 「告白する、って言っちゃった。 |湊《みなと》くん・・好きな人がいるって言ってたし 集まるのもやめてほしいって言ってたし お願いしたら来てくれるかな、どうしよう」 とそわそわした様子で去っていった。 あの子、|小清水《こしみず》さんっていうんだ。 |天文部《てんもんぶ》だけど|湊《みなと》くんとは違うクラスって言ってたよね。 じゃあ|湊《みなと》くんとは面識はないのかな。 学校だと|湊《みなと》くんに会わないように ってめりの先輩から言われてるし、直接聞くのは難しいかなあ。 今日告白するのか・・|湊《みなと》くんに告白されているからなんだか心が苦しくなる。 あっという間に放課後。 めりの先輩に会うために図書室に来た。 だけど、来たタイミングが悪く、めりの先輩に口を塞がれ、本棚の影に隠れている。 そう、|小清水《こしみず》さんと|湊《みなと》くんがいるのだ。告白の場所に図書室を選んだみたい。 「・・|湊《みなと》くん、こんな場所に呼んでごめんなさい。 私は隣のクラスの|小清水杏奈《こしみずあんな》です。 |湊《みなと》くんとは同じ小学校だったけどクラスも違ったし、 |天文部《てんもんぶ》だけどここでも違うクラスで・・。 でも、ずっと|湊《みなと》くんのこと、見てました」 「|小清水《こしみず》さん・・僕には好きな人がいるって・・」 「はい、分かってます・・。|湊《みなと》くんとはあまり話したこともなかったから、 私のことは知らないと思うけど、それでもずっと、憧れていました。 |湊《みなと》くんに好きな人がいても、叶わない恋だとしても、 私は、|湊《みなと》くんのこと、好きなままでいたい、な」 「ありがとう。でも|小清水《こしみず》さんが見ている僕は、本当の僕じゃないかもしれないよ」 「・・私、|湊《みなと》くんに助けてもらったことがあるから。 運動会で怪我したとき、保健室に連れて行ってくれました。 だから優しい人だって思ってます。 今日は私の話を聞いてくれてありがとう」 |小清水《こしみず》さんが笑顔になった途端、|湊《みなと》くんが|小清水《こしみず》さんの手を握る。 |湊《みなと》くんが何かを感じ取ったようだった。 「・・|小清水《こしみず》さん、星座の力持ってる?」 「|湊《みなと》くん・・!?え、えっと、星座の力なんてないです! でも|湊《みなと》くんとは・・敵同士になりたくな・・あ、なんでもないです!」 |小清水《こしみず》さんは慌ててそのまま立ち去ってしまった。 |湊《みなと》くんは私達が隠れている本棚に近づいてきた。 「|鈴原《すずはら》さん、|稲荷《いなり》さん。盗み聞きはよくないよ」 |湊《みなと》くんの顔が怖い。私とめりの先輩は「ごめんなさい」と謝った。 「|湊《みなと》くん、|杏奈《あんな》さんの星座の力って・・?」 「分からない。けど僕に話しているとき、|小清水《こしみず》さんから星座の力を感じたんだ。 だから何かの星座の力の持ち主であることには違いないよ」 「敵同士になりたくない、ってすっごく怪しいわね。|桃羽《ももは》側についてるかも」 「え、優しそうな子なのに」 「人は見かけによらず、よ。でも力で攻撃するような感じではなかった。 力を増幅させるような力なのかしら・・?敵同士になりたくない、でも|湊《みなと》くんには力が発動していた」 「やっぱり・・|湊《みなと》くんが好きだから、かな・・」 私は|湊《みなと》くんに思いを伝える様子の|杏奈《あんな》さんを思い出して胸が苦しくなった。 |杏奈《あんな》さんみたいに沢山の人が|湊《みなと》くんを好きだったから。 「|稲荷《いなり》ちゃん、気にしちゃだめよ。 |稲荷《いなり》ちゃんが罪悪感を持つことじゃないし、 |瀬名《せな》くんだって選ぶ権利はあるんだからね」 「ありがとうございます、めりの先輩」 「学校では会わないようにって言ったのに、 あなたたち、よく会うわね、これも困ったものね」 |湊《みなと》くんが「すみません」とめりの先輩に謝る。 めりの先輩はため息をついている。 「|稲荷《いなり》ちゃんも今のところ、なにもないわね?」 「はい、今のところは大丈夫です」 「カバン隠しもなんだったのかしらね。 |稲荷《いなり》ちゃんのお母様が|十蟹《とがに》先生に相談したから なんとかなってるようなものだけど、気をつけなさいよ。 今日話そうとしてたことはまた今度話すわ。 帰りが遅くなると心配されるんでしょ?それじゃ、お疲れ」 めりの先輩はそのまま図書室に残り、情報収集をするらしい。 私と|湊《みなと》くんはタイミングをずらして校舎を出る。 それから見えないであろう場所で合流する。 「あ、あの、|湊《みなと》くん。告白されるってやっぱり、慣れてるの・・?」 「慣れてないよ。慣れちゃいけない。 相手が大切な思いを伝えてくれているから、それはきちんと受け止めないといけないって思う」 「そ、そっか。|湊《みなと》くんはたくさん告白されてるから慣れていると思ってた、ごめんね」 「そう思われても仕方ないよね。 たまにクラスでもどうしてお前ばっかりって言われること、あるよ。 僕は沢山の人に好きと言われるより大切な一人に分かってもらえればそれで・・」 |湊《みなと》くんはみんなの憧れだから告白されるのも日常茶飯事で慣れていると思っていた。 けど、思いを受け止めることって軽々しくしてはいけないんだよね。 |杏奈《あんな》さんも緊張しながら自分の思いを|湊《みなと》くんに伝えていた。 |湊《みなと》くんはその軽くない思いをずっと受け止めてきたんだ。 「わ、私、告白とかされたことがなかったから、どうしたらいいか、分かってない」 「それを言ったら、僕も告白したけど、これでよかったのか、分かってない」 思わずふたりで笑ってしまった。 私達、こうして笑えるようになったんだ。 歩いているうちにいつもの分かれ道。 「それじゃ、気をつけてね、|稲荷《いなり》さん」 「うん、またね!|湊《みなと》くん」 ・・・あ、ここは「|稲荷《いなり》さん」なんだ。 やっぱり名前で呼んでくれるのは電話だけなんだ。 ちょっとだけさみしくなった。 どうしてさみしくなったんだろう。 |大河《たいが》に名前を呼ばれるのは当たり前だったのに、|湊《みなと》くんから初めて名前を呼ばれて嬉しかった、から? もっと呼んでくれてもいいのにって思ってしまった・・? 頭がゴジャゴジャする中、家に帰った。