星空の解放日
麦星すばる
さそり座
—私は文学部の怪しい生徒を尾行していた。
というのも星座の力を使った気配がしたからだ。
瀬名くんと辰巳くんも同じ気配を感じたようで同行している。
星座の力の気配は図書室。
そこには例の生徒と生徒に抱きかかえられた稲荷ちゃんがいた。
気絶させられたのだとすぐ分かった。
「あなた!星座の力の持ち主ね!怪しいと思って尾行して正解だったわ」
「なんだ、知ってるんだ。そうだよ。
俺秋月流星の星座の力はさそり座。触れただけで相手を気絶させられる」
「どうして稲荷さんを」
「優等生の瀬名に分かってたまるかよ」
「離さないなら力づくでも」
瀬名くんは水で攻撃するけど秋月くんはすばやくかわす。
なにか運動やってたわね。この動き。
私の羊たちもどんどん消えていってしまう。
動きからして空手かしら。
瀬名くんの水も当たる前にかわされるか拳で消えてしまう。
これを稲荷ちゃんを抱えながらやっているわけだから、なかなかのやり手ね・・。
「と、とにかく気絶しているほのかさんをお助けします!」
辰巳くんが力を使うと稲荷ちゃん目を覚ましたんだけど・・・
そういえば、稲荷ちゃん、抱きかかえられたままだったわね。
「りゅ、流星くん!?」
「お目覚めですか?お姫様っ!」
秋月くんは満面の笑みで稲荷ちゃんを見つめている。
その様子を見た辰巳くんはポカンとしている。
「さっきと口調が違うんですけど・・・」
一方稲荷ちゃんは顔を真っ赤にして秋月くんから離れようとしている。
「み、湊くんになおきくんにめりの先輩まで!?流星くん離してっ!!」
「嫌だね。ここで離したらいつお話できるか分からないもん」
稲荷ちゃんは「離して!」
って何度も言うけれど、秋月くんは離す気配がない。
「そっか」
私たちはその一声で稲荷ちゃんが本気で怒っていること分かった。
そして稲荷ちゃんが力を使い秋月くんは植物で縛られてしまった。
稲荷ちゃんが解放されて瀬名くんと辰巳くんはすごく安心したようだった。
少し落ち着いてから稲荷ちゃんは笑顔で秋月くんに質問する。
「流星くん、どうしてこんなことしたのかな?」
秋月くんは植物に縛られて動くことができない。
私達は秋月くんがどう答えるのかをただ待っている。
「出来心なんです!ごめんなさい!」
秋月くんは涙目になりながら小さな子供のように大声を上げる。
「さっきいつお話できるか分からない
って言ってたけどお話なら同じクラスだからいつでもできるよね?」
「同じ!?」
「クラス!?」
瀬名くんと辰巳くんは口を揃えて言う。
文学部に出入りすることが少ない二人は知らなくて無理はない。
「俺、稲荷と話してみたかったんだ。
けど七木と古坂と瀬名関連のガードが強くて近寄れなくて。
今日っていうか今週は古坂も休みだし、チャンスだと思って」
「へー。俺も随分甘く見られたもんだ」
図書室に七木くんが入ってくる。
後ろから見られていたみたいね。
私ですら気づかなかった。
「おい秋月。ほのかと話したいなら正々堂々話しかけりゃいいじゃないか。
卑怯者は嫌われるだけだぞ。
それに秋月が女子の情報集めてるの知ってるからな」
「それ本当?大河」
「ああ、本当だ」
瀬名くんと七木くんがとっても怒ってるわ・・・。
稲荷ちゃんに手を出して女子の情報も集めている。
そりゃあ怒るのも仕方ないわね。
寒くなってきた。
「待ってくれ!」
秋月くんが叫ぶ。
「俺が女子の情報を集めていたのは、周りにウケるから。
それで稲荷のこと知って話してみたいって思った。
でも七木の言う通り卑怯者だよな。
軽い気持ちだった。稲荷も七木も瀬名も悪かった」
秋月くんが真剣な顔で謝罪をする。
私も嘘をついているようにはみえなかった。
稲荷ちゃんが秋月くんを縛っていた植物を消す。
すると秋月くんは「ずっと縛られるかと思った!」と言って安心した顔つきになる。
「てかみんな星座の力持ってるの!?すげーじゃん。俺も混ぜて!」
秋月くんはさっきのことがなかったかのように明るく喋っている。
みんなは怒ることもできず呆れている。私は彼に提案をする。
「いいわよ。その代わり、あなたが持ってる女子の情報ちょうだい」
「ええー!?」
これくらいしないと懲りないと思って
提案してみたけどやっぱり嫌そうな顔をしているわね。
私は「稲荷ちゃん」と言って合図する。
稲荷ちゃんは秋月くんに向かってにっこり笑ってみせる。
「はい!喜んでご提供いたします」
「ありがとう、流星くん。これからよろしくね」
あんなことをされても許しちゃう稲荷ちゃんだけど、これも彼女らしさということかしらね。
後ろで瀬名くんと七木くんがなにか話してる。
「稲荷さん、怒ると怖いね」
「湊にだけは言われたくないと思うぞ」
やれやれ。瀬名くんも怒ると怖いものね。
とりあえず星座の力を持った生徒をまた一人こちら側に呼び込めた。
けど桃羽の方にいる生徒もいるわね、きっと。
「ねえねえ、稲荷。ほのぴって呼んでいい?」
秋月くんはさっきのことを忘れたと思わせるくらい馴れ馴れしく稲荷ちゃんに言う。
瀬名くんと七木くんが怒りそうになっているけど稲荷ちゃんは二人を抑える。
「しょうがないなあ。いいよ。でもちゃんと協力してね」
「もちろん。これからは堂々とほのぴとお話していくし、星座の力についても協力するよ。
一応小学の頃空手やってたし、力にはなれると思う」
「信じてるからね。流星くん」
秋月くんの女子好きは心配だけど稲荷ちゃんの笑顔には弱いみたいだし、
いざとなれば私も瀬名くんたちも駆けつけるし何とかなるわよね。
というかなんとかするわ。
おひつじ座の私、ふたご座の星華、月華、おとめ座の稲荷ちゃん、
へびつかい座の辰巳くん、さそり座の秋月くん、うお座の瀬名くん。
それからかに座の十蟹先生。しし座の桃羽。
あと見つかってないのはおうし座、てんびん座、いて座、やぎ座、みずがめ座・・。
早く見つけないと。
桃羽側についているとしたら、どの星座なのか調べないとね。