星空の解放日
麦星すばる
夏祭り
「どどどうしよう・・。湊くんに告白・・されちゃった・・」
湊くんと水族館に行った帰り、私は湊くんに告白された。
今まで憧れでずっと遠くから見ていた湊くんに告白されるなんて。
私は水族館で買ったイルカのぬいぐるみを抱きしめている。
明日は夏祭りで大河と会う約束もしているし、気持ちが持つか心配。
「やっぱりこれは・・夢なんじゃ!?」
夢だと思って頬をつねってみても痛いし、
歩いた疲労感はあるし、やっぱり夢じゃない。
湊くんは大河も私のことが好きって言ってたけど、本当かな・・。
大河が?いやいやまさか。
「大河とはずっと一緒だけど、好き・・とか考えたことなかったな。
面倒見のいい兄貴!みたいな感じで・・。
もしかしたらくるみちゃんと気が合うのかも!?一緒にいるし・・」
ごまかすようにいろいろ考えてみる。
でも大河に「私のこと好き?」
なんて聞くわけにもいかないし、
大河が話してくれるまで待つしかない。
「そもそも、恋愛とは縁がなかったし、クラスの子の噂話でしか聞いたことがない!
わかることがなにもない。どうしたらいいんだろう。
また星華先輩と月華先輩に聞いてもらう?
・・湊くんは友達以上の関係でいられるのか友達でいられるのか、分からないって言ってた。
やっぱり、私の答え次第で湊くんと大河といつも通りにいられなくなるのは、嫌だな。
それに、湊くんを好きだった女の子はたくさんいた。
私のせいでその子達を傷つけてないかな」
考えれば考えるほどわからなくなる。
けれど、明日は大河と会う約束をしている。
夏祭りの準備で気を紛らわせて、私はそのまま眠りについた。
—翌朝。大河の家は祭りの準備ですでに出かけているようで誰もいない。
大河の家はお兄さんの|天《てん》さん、妹の|天音《あまね》ちゃんがいて賑やかだから、誰もいないとすぐに分かる。
大河とは夕方に夏祭りの会場で待ち合わせをしている。
私はそれまで時間があるので珍しく宿題を片付けている。
そうでもしていないと、湊くんや大河の顔が浮かんで顔が真っ赤になって、布団にもぐってしまうから。
待ち合わせが夕方からでよかった。
朝から大河を見たら、落ち着かなくてどうにかなりそうだったもの。
・・どうして急に大河を意識しているんだろう。
やっぱり湊くんに言われたことが気になっているからかな。
湊くんの言ったことが冗談ならいいけど、湊くんは冗談を言う人じゃない。
宿題を終える頃には約束の時間が近づいていた。
私は慌てながら浴衣に着替えてそのまま家を出る。
「どうしよ、ギリギリになっちゃう!」
走る。けど浴衣じゃ走りづらい。
なにもないけどつまづいて・・転びそう!もうだめかも。
・・あれ?転んでない。誰かが私を支えてくれたみたいだ。
「こんにちは!ほのかちゃん!大河と待ち合わせでしょ?
少しくらい遅れても大河は怒らないから!
それにほのかちゃんが怪我したら大河めっちゃ悲しむよ」
「て、天さん!?こんにちは!すみません・・・。」
|七木天《ななきてん》さん。大河のお兄さん。
金髪に染まった髪は少しはねている。
高校生で大河より背が高くて、大人びているけれど明るい声。
大河って口は悪いけど真面目だから、天さんは明るく見える。
天さんは支えていた私を下ろす。
「天さんはどうしてここに?」
「俺、迎えに行く人がいて、その人の家に向かう途中」
「か、彼女ですか!?」
私が思わず声を上げると、天さんは「そのとーりー!」とうなづく。
やっぱり高校生になるとお付き合いしても普通だよね。
「じゃ、俺こっちだから、ほのかちゃんも気をつけていきなよ」
天さんと別れて夏祭りの会場に向かう。
まだ暗くなっていないのに、屋台がたくさん広がっている。
人混みがすごい。ここ、どこだろう。
毎年行っているはずなのに、色々なことがありすぎて、頭が回らない。
あと宿題もやったし頭を使いすぎた。とにかくこの人混みからでなくちゃ。
「ほのか」
ん?誰か私を呼んだ?
もう一回「ほのか」と呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと大河が立っていた。
「大河!?どうして分かったの!?」
「さっき、鈴の音が聞こえたからいるんだなって思ったけど、天音がこの辺で見たって教えてくれた」
「そっか、ありがとう。大河は優しいね」
「優しい?そ、そうか?」
大河は私から目を逸らす。
いつもだったら「明日雨が降る」とか言うからびっくり。
「屋台でも見るか?」
「うん」
はぐれないように手をつなぐ。
これはいつものことなんだけど、どうしてだろう。
今日はなんだかドキドキする。
湊くんのことがあったから?
人混みで大河についていくのが精一杯で、気づいたら射的の屋台の前にいた。
「ほのか、なんか欲しいのあるか?取ってやるよ」
大河は小さい頃から射的が得意。
毎年何か取ってくれる。
「・・いいの?」
「いいの?って毎年のことじゃん。気にするなよ。俺が射的やりたいだけだし」
何にするか悩んだけれど、大河が「あれ、ほのかっぽくね?」
と招き猫のぬいぐるみに狙いを定める。
大河は一発で招き猫のぬいぐるみを取ってしまった。
それを「あげるよ」と私に手渡す。
「あ、ありがとう。やっぱり大河は射的上手だね!」
「まあ、何年もやってるし、屋台のおじさんからコツは聞いてるから。
・・ほのか、花火がきれいに見える静かな場所
があるんだけど、そこ行かない?人混みだと話しづらいし」
大河に連れて行かれた場所は夏祭りの会場から少し離れた河原だった。
人もいないし、静かで、夜空がきれいに見える。
「すごい!大河、こういう場所知ってるんだね!」
「ああ、俺のとっておき」
大河は誇らしげに言う。
そして頭につけているお面を被る。
「湊に、告白されたんだってな」
「・・どうして知ってるの!?」
「湊から電話があったよ。ほのかとどう会えばいいか気にしてた」
湊くんが大河に電話で報告していたなんて、なんで・・?悩んでいたのかな。
「なんで俺に電話?って思っただろ」
大河はお面を外し、私のことを見つめる。
「古坂には気づかれてたけど。俺、ずっとほのかのことが・・・」
大河が言いかけたところに人影。
大河は喋るのを止める。
「お兄ちゃん!こんなところにいたのね!
ほのかさんになにも食べさせないで、もう!
たこ焼きとか色々持ってきたから、食べて!
・・って私、お邪魔だったみたいですね。」
大河の妹、|七木天音《ななきあまね》ちゃん。
小学生なのにしっかりしていて、大人びている。ポニーテールが似合う。
「ありがとう、天音ちゃん。お邪魔とかじゃないから気にしないでね」
「いえ、兄が何かしたらガツンと言ってやってください!
私、屋台の手伝いがあるからこれで失礼します!」
天音ちゃんは慌てて立ち去っていく。
大河はたこ焼きを見て「とりあえず食うか」と私に差し出す。
屋台のたこ焼きはとっても美味しくて好き。
「大河?何を言おうとしたの?」
「えっと・・・俺、ほのかに湊のこと調査して、って言ったこと、後悔してるんだ。
ほのかは星座の力に目覚めて、色々巻き込まれてるみたいだし・・。
俺が星座の力に目覚めていればなにかできるのに、力がないから何もできない。
最近は祭りの準備で早く帰ることも多かったし」
「そんなことない!こうして話聞いてもらえるだけでも助かるよ。忙しいのにありがとう」
ん?さっきの話と違うような。私は大河に問い詰める。
「大河、本当は何を言おうとしたの?・・この話も嘘じゃないと思うけど」
「・・そうだな。
・・・俺、ほのかのことがずっと好きだったんだよ!
古坂には気づかれてたけどな」
「ええええええええええええええ!?」
「古坂や湊から聞いてなかったか?」
「・・湊くんからは聞いてた」
大河は「ほらみろ」と笑ってみせる。
「まあ、伝えたけど。ほのかから嫌われなければ、友達でもお隣さんなんでもいいよ。
ほのかが誰を選んでも選ばなくても、それはほのかが自由に決められるから」
湊くんも大河も優しい。どうして自分に優しくしてくれるの。
私は思わず涙が溢れていた。
「・・泣くなよ。ほのかには笑顔が似合うんだから」
私は大河の背中で泣いていた。
「でも、湊くんは友達以上の関係でいられるのか
友達でいられるのか、わからないって言ってた。
私が答えを出すことで、みんなと友達でいられなくなる。
私、それは嫌だよ・・!!誰かを傷つけるのも、嫌だよ」
「じゃあ、答えはすぐに出さなくていいんじゃないの?
別に俺も湊もすぐに答えが欲しいわけじゃないし。
ただ自分の気持ちをほのかに伝えただけだから」
気持ちが落ち着いた頃には花火が打ち上がっていた。
「ほら、ほのか。花火始まってるぞ」
「う、うん。背中借りちゃってごめんね」
「いいってことよ。花火見ようぜ」
私は大河と花火を見た。大河は落ち着いていて、私だけ緊張していた。
「・・大河。どうして、落ち着いていられるの?
私は湊くんと大河に告白されて、ドキドキしてるのに。天さんに相談したとか?」
「はあ?あの兄貴はチャラいから相談も何も当てにならないって。
俺も緊張してないわけじゃないよ。表に出してないだけ。
俺が変だとほのかもおかしくなるだろ。だからいつも通りに振る舞ってるの」
「・・そっか。私もいつも通りに振る舞えたらいいんだけどな。大河はすごいよ」
大河はいつものように私の頭を撫でる。なんだか安心した。
最後の花火も終わり私達は立ち上がる。
「・・帰ろうか」
「うん。」
家もお隣同士だから帰り道は一緒。
大河の家の前には天音ちゃんが待ち構えていた。
「お兄ちゃん!片付けをサボって、ずっとほのかさんといたの!?
天兄さんも遊びに行っちゃうし、私と父さんと母さんしかいなくて大変だったんだから!」
「あ、わりぃ。すっかり忘れてた・・」
「ほのかさんもガツンと言っていいですから!それでは失礼します。はい、お兄ちゃんも行くよ!」
天音ちゃんが大河を引っ張っていく。
大河は「明日学校でな!」と言ってそのまま家に引きずりこまれていった。
明日、学校で・・か。そうだ。明日学校だったんだ。とても気まずい。
でも考えすぎると眠れなくなるよね。
私は家に帰ったら明日の準備をしてそのまま眠りについた。