星空の解放日
麦星すばる
小テスト
「はーい!みなさん、おはようございます。ピース。
待ちに待った小テストですねえ。
これはみなさんが今どれくらい授業の内容を覚えているか?
をチェックするものです、ピース」
十蟹先生がピースサインをしながら説明している。
周りからは
「なにがピースだよ」「小テストなんて待ってないよ」
「早く終わらせて」「楽になりたい」
などブーイングの嵐が聞こえる。
「まあまあ、そんなことを言ってはいけません。
もしかしたら、お勉強を頑張っている方もいるかもしれませんからねえ、ピース」
十蟹先生と目があったような気がする。
ううん、気のせいだよね。
十蟹先生がテスト用紙を配り始める。
裏面になっていて、問題は分からない。
ドキドキする。
今までお勉強が嫌いでずっとやってこなかったから。
けれど、今回は湊くんとくるみちゃんが私のために勉強を教えてくれた。
ちゃんといい結果を残したい。
「はじめ~!」
十蟹先生のゆるい掛け声とともにテスト用紙を表向きにする。
問題が前よりも分かる。湊くんとくるみちゃんに教えてもらった成果がちゃんと出てる。
私は次々と回答を埋めていく。
分からないところもあったけれど、前よりはだいぶ良くなった。
午前の科目は終わって、お昼休憩。
私は大河やくるみちゃんを退けて、図書室へ向かった。
そこには星華先輩と月華先輩がいた。
「ほのか、小テストお疲れ様」
「どう?順調?」
「はい、湊くんとくるみちゃんに教えてもらったので
今までで一番良い結果になりそうです!」
「・・・で、私たちに会いに来るということは、
なにか話したいことがあるからなのよね?」
星華先輩が私の目を見て言う。
そう、私は星華先輩と月華先輩に
相談したいことがあって、ふたりを探して図書室に来た。
「あの、私、大河と湊くんと・・」
「え?デート?デートなのね?」
「二股はよくないと思うわ・・」
星華先輩と月華先輩が同時に喋りだす。
「やっぱり、デート・・ですよね・・。
今回のテストの成績が良かったら湊くんが水族館に行こうって言ってくれて、
この間の勉強会で大河が一緒に夏祭りに行こうって。
日付は同じ日にならないようにしましたけど、どちらも断れなくて」
星華先輩と月華先輩は落ち着いているから話しやすい。
月華先輩が私の頭に優しく手を乗せて言う。
「ほのかは優しいからね。断れなくても仕方ないし、そこがほのかの良いところでもある。
でもね、誘ってくれた湊くんや大河くんが
どういう思いでほのかを選んだのか。
そこは考えたほうがいいね」
「思い・・?」
「お友達だったり、女の子として好きみたいな、特別な感情だったり、そういう思い。
お友達としてだったら、別にふたりっきりじゃなくてもいいじゃない?
ほのかとふたりで一緒に過ごしたいのよ、湊くんも大河くんも。
・・もし、特別な感情だったら、ほのかはどちらかを選ぶことになる。
二股なんてしたら、めりのが黙っていないわよ」
「そ、そんな・・。私、女の子らしくもないのに。どうして?」
話を聞いている横で星華先輩が答える。
「ほのかは誰にでも優しいし、明るくて元気で笑顔が素敵だから。
ほら、漫画でも誰かを元気づけたり、仲間を助けたりするような主人公がいるじゃん。
ほのかはそういうタイプの子ってことよ。お勉強だって助けてもらったんでしょ?
できないところは助けてもらえばいいし、助けたくなるような魅力がほのかにはある」
「そ、そうですかねえ。
はっ!湊くんか大河・・うーん・・」
「まあまあ、そんなに深く考えずに。
自分の思いほど嘘をつけないものなんてないしさ、
湊くんと大河くんもほのかが決めた答えに文句言うような子じゃないよ、たぶん」
「たぶん?」
私は目を丸くする。星華先輩はクスクスと笑い出す。
「だって、私、湊くんがうお座の能力者
ってことしか知らないし、大河くんは顔も見たことがないんだよ?
だけど、ほのかの友達なら大丈夫だよ。で、気持ちの方は楽になった?」
「はい、聞いてもらって落ち着きました。ありがとうございます!先輩」
「ほのかが元気出たなら良かった。途中まで一緒に行こう」
同じ文学部の月華先輩と
途中まで一緒に行くことになった。
「ほのか、月華をよろしくね」
「はい!任せてください。お昼休みのところありがとうございました!」
天文部の星華先輩と別れて、文学部の校舎へ向かう。
するとくるみちゃんが走ってくる。
「いな・・ほのかちゃん探しましたわよ!お昼はちゃんと食べましたの?」
「く、くるみちゃん・・お昼は食べたよ。あ、こっちは同じ文学部の月華先輩だよ」
「ど、どうも・・・」
月華先輩は怯えた様子でくるみちゃんを見ている。
そんな様子を見てくるみちゃんも困惑している。
「はじめまして。ほのかちゃんのクラスメイトの古坂くるみと申します」
「はい、ご丁寧にありがとうございます・・。それでは」
月華先輩は急いで走っていってしまった。
初対面だから緊張したのかな。
でも怖いものを見たかのような、そんな瞳をしていたように思った。
「あの先輩、おとなしい方なのかしら?
それよりいなほちゃん、私と大河くんを置いてどこに?」
「午後の科目に備えてお勉強してたんだよ。
せっかくくるみちゃんや湊くんが教えてくれたんだもの。しっかり結果残さないとね」
「まあ、あんなにお勉強が嫌いだったのに、
お勉強熱心になられて、私も嬉しいですわ。さ、教室に戻りましょ」
私はくるみちゃんに引っ張られるように教室へ戻った。
そして午後の科目の小テストも
午前と変わらない調子で回答を埋めることができた。
長かった小テストもあっという間に感じた。
「ほのか、お疲れ」
「ありがと! 大河もお疲れ様」
「おふたりとも、とっても頑張りましたわ!
あとはいなほちゃんの結果が待ち遠しいですわね!」
「そんなこと言われてもなあ。
くるみちゃんも湊くんも頑張って教えてくれたんだから、競争なんてやめようよ」
「いいえ、瀬名くんに負けるわけにはいきませんの」
あんなに真剣なくるみちゃんの表情は初めて見たかも。
前から湊くんとくるみちゃん
って仲が悪いというか、意地を張っているというか、そんな感じだよね。
でも、それを言ったら怒られそうな気がする。
「まあまあ、古坂もほどほどにな」
大河がなだめるようにくるみちゃんに声をかける。
そうしたらくるみちゃんも少し落ち着いたようだ。
「あらやだ、私ったら。熱くなりすぎましたわ。
テストの結果発表は金曜日でしたわね。
今日は月曜日ですから・・あと4日もありますわ!」
大河が「だから落ち着けって」とツッコむ。
くるみちゃんはどうしてここまで私のことを考えてくれるんだろう。
確かに小学生の頃、いじめられていたくるみちゃんを
助けたのは私と大河だから、助けてくれたからと考えるとしっくりくる。
けど、そこまでする?って思うことがあるんだよね。
特に湊くんに関わるところだと。
実は湊くんとなおきくんともお話したくて、弓道部の見学を申し込んでおいたんだ。
早く行かなくちゃ。
「ごめん、今日用事があるからお先に失礼するね!また明日!」
私は急いで、弓道部に向かった。
そこには湊くんとなおきくんがなにか話していた。
私に気づいたなおきくんが手を振る。
「あ、ほのかさんじゃないですか!ようこそいらっしゃいました!」
「稲荷さん、小テストお疲れ様。
なおきくんも交えて話したいことがあるから、部活が終わったらちょっといいかな?」
「う、うん!」
湊くんもなおきくんも弓道の腕が前に見学したときよりも上達している。
湊くんが矢を放つたびに黄色い声援が響く。
そのたびになおきくんは「トホホ・・」と言っていたけれど、ほとんど声援にかき消されていた。
部活動終了のチャイムが鳴り、湊くんとなおきくんがやってくる。
「ほのかさん、図書室でお会いしましょう」
「鈴原さんと鏡宮さんたちも一緒だから。これで何となく察して、ね?」
最初は、ん?と思ったけれど、そうだ。星座の能力者の人たちだ。
私は先に図書室に行くと、そこにはめりの先輩と星華先輩と月華先輩が集まっていた。